ミケ的奇想 vol.1

2003年~2022年3月のアーカイブ

タロットの精霊の悦ぶ美しい部屋

 朋百香さんの原画展のとき、アーティーさんからプレゼントしていただいたタロットカードは、アーカイバル印刷という名で特許を取られていて、原画と見紛うほどの美しさ。

 本来、実用ではなく、観賞用なのだけど、おかまいなしでガンガンと使っていた。(ごめんなさいっ)

 京都タロットは、この夏に廉価版を作ることにしたので、やはり、アーティーさんのカードは観賞用に庵に飾ろうと思い立ち、向井さんとおっしゃる額装家の方のアトリエを訪れた。

 向井さんは、フランス額装を本場で修行されて、フランスの国家資格をお持ち。今や彼女の教室は、どこも満席のご様子。

 素敵なアトリエには、彼女の施した作品と、額見本が並べられていて、無造作に置かれているものまでが、何もかもセンス良く、美しく見えてしまうくらい。

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 はじめに大アルカナ二十二枚のカードをお見せすると、

 「このカードは原画ですか?」とおっしゃって、印刷だと伝えると、「原画かと思った!」と驚かれていた。

 「稲穂の宮は、5つのカードを、こんなふうに並べてもらって…」

 と、イメージをリクエストしていたのだけれど、彼女の作品群を眺めているうちに、なぜか、そんなことは、どうでもよくなってしまった。

 「…て、思ってたんですけど……やっぱり、すべて、向井さんにお任せします!」

 突然の路線変更に、向井さんの方は、ちょっとびっくりされながらも、

 「主役は『絵』ですから、ミケさんのイメージ通りでもいいですし、お任せしていただいても、どちらでも」

 と、言ってくださった。

 向井さんのイメージのままに額装してもらう方が、タロットカードが喜ぶ

 絶対、そう。

 私の、この類の直感は、当たる。笑

 大事なことは、カード達…たろうさんが、ヤマトが、イワナガヒメが、化野で途方に暮れる童子が、イザナミさんが……タロットの精みんなが、「喜ぶこと」

 そっちの方が、コンテンツやプロットに基づいた額装などより、ずっとずっと大事なことなんだと、なぜだか強烈に感じてしまった。

 絵の魅力を最大限に引き出すのが額装。タロットの精たちにとっても、自分が素敵に見えるお家(額装)の方がええに決まってるやん!

 私のこだわりで、あれこれ指示するより、センス良い、腕のある経験豊かな人が決めてくれた方が、何倍もいいに決まっている🤗

 

 私のリクエストは極めて具体的。

 「ひと月に〓万円。1つでもいいし、いっぺんに3つ4つでも構いません。向井さんが『この絵にはコレがいい!』と感じたまま演出してください」 

 『零,たろう』と『壱,いちひめ』のペアが、最初にうちの庵にやってくるイメージがあったので、まずは、『たろう』と『いちひめ』から額装してもらうことを指定した。彼らが、他のメンバーを庵に迎え入れる…という物語が、私の頭にある。

 ただし、あとの製作順番は、すべて向井さんにお任せしようと、大アルカナ二十二枚を、この無二の額装家に託した。

 実は、向井さんは、翌日からパリ旅行。額装を学ぶお弟子さん達の引率も兼ねてとのこと。

 パリ旅行の前に、この打ち合わせを滑り込ませてもらえたことは、なんだかとてもラッキーなのではないかと思えてしかたがない。

 向井さんの記憶の片隅に、京都タロットが潜んだまま、タロットの本場フランス入りされるなんて。💖

 しばらく、大好きなカード達と離れてしまうのは寂しいけれど、彼らはきっと、私の選択を歓迎してくれるような気がするのであった。

 

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