ミケ的奇想 vol.1

2003年~2022年3月のアーカイブ

わたしの中の聖と俗 ~日本妖怪大百科vol.5~

日記の方にも書きましたが、vol.5では、京都と東近江市の二つの素敵な妖怪の街を取材させていただきました。 それは、妖怪ビギナーのわたしにとって、とても刺激的で、また見えない何かに対する示唆に溢れたひとときでした。 前のvol.4では、寺社仏閣の記事を書かせていただいたように、神社仏閣めぐりは、わたしの趣味の一つ。 わたしの中にある妖怪に惹かれる面と、神社仏閣に惹かれる面…。 取材を進めるうちにハッと気づいたのですが、このことは、相反する二つのことでは全くなくて、実はとても似ていることを発見したのです! わたしが神社仏閣が好きだという理由は、あえて言うなら 「そこに『何か』があると思うから」。 「何か」というのは、「真実味」とか「リアリティ」というのに近いような気がします。 そう、こんなふうにも言い換えられます。 「何か真実(ほんとうのこと)があるような気がするから」。 これは、妖怪好きの人々が、なぜか妖怪に惹かれてしまう理由と一致しているようなのです。 かつて捨て置かれた器物たちが魑魅魍魎と化し、一条通を闊歩する百鬼夜行の姿に、エコのテーマを見るという粋さ。 村々に残る「早う寝んかったらお化けが喰うぞ」と子どもをしつける習慣に、目に見えないものへの畏怖をも学ばせる在り方。 わたし達は、その幻想の中に何か「ほんとうのこと」を感じるのですね。 また、妖怪の世界は、デザイン的にも美的かつ自由でオシャレです。 決まり事の多い宗教画の世界とは違い、自由であるからこそ、いにしえの人々の本音が、そこに託され、にじみ出ているように思います。 取材で伺ったことで、わたし自身もしみじみ感じたことは、正史は、勝者の歴史しか載せられていないから、改ざんされたり、本当のことから乖離していることが多々あるけれど、人間と歴史…本当のリアルな姿を知りたいなら、敗者の歴史を含む妖怪の世界だ、ということ。 実は今回の取材で、もっともビックリしたことが、妖怪マニア人口の多さですが(まあ、もっともマニアが多いからこそ『妖怪大百科』なる十巻仕立ての本が発売されるわけですけど)妖怪の世界にこそ、人々の本音の思いを伝えることができるから、それも、とてもうなづけることだと感じました。 オシャレで、自由で、本音で、フシギなこと… 人は単に理論的に正しいことより、むしろこんなリアリティに心を惹かれるのですね。 わたしはいろんな方との妖怪談義に交じりながら、(妖怪事業?をなさっている方って魅力的な御仁が多いなあ~)と感じていたら、ある方が、ポロっとおっしゃいました。 「妖怪好きの女性って、なんでかキレイな子とか、かわいい子やオシャレな子が多いんやわ」と。 ふうむ、なるほど。 これは、ぜひともお仲間にならなければ。(笑) …まあ、そんなわけで、わたしの中で矛盾なく存在する聖と俗。  ……いんや、ちょっと違います。 これらは、聖と俗、正と邪、光と闇、善と悪などという 「相対する二極」に惹かれている、なんて単純なシンボリズムでは全然ありません。 わたしの中では、「人の中に生きている本質的なもの」という意味合いで、社寺が好きなことも、今回、妖怪を好きになったことも、聖も俗も、まるっきり矛盾なく、おんなじことなんですから。 日本妖怪大百科は、あの荒俣宏氏が監修で、VOL.5では『妖怪はHだ』というタイトル書かれている中に、葛飾北斎の描いた『大ダコにかどわかされる海女』という、めちゃめちゃHな妖怪春画が小さく寄せられています。(笑) 北斎と言えば、言わずと知れた浮世絵の大巨匠で、かのゴッホにも影響を与えた人としても有名ですが(夫が、以前アムステルダムゴッホ美術館に行った時に、そこにあった浮世絵の数の多さにびっくりしたと言っていました)その抜きん出た作品群の中には、息を飲むような、すばらしい大龍王の大作もあれば、エロス漂う緻密(に過ぎる…笑)な春画の数々を残したことでも有名ですね。 彼が、後の世に、日本のみならず海外の絵描きにまで影響を与え、魅力的な人物像として、現在も人々にイメージされているのは、この一見、両極のものを、堂々たるモチーフとして表現しきる懐の深さと多彩さであり、だからこそ、人としてのリアリティを覚えるからではないでしょうか。 聖と俗。 それは、彼の中で、矛盾するものではなかったような気がするのです。 妖怪というと、単一のイメージを持ちがちですが、その奥深さに改めて目からウロコが落ちた、妖怪ビギナーのワタクシでした。(^^) ぜひぜひ、あなたも妖怪の美的で活き活きとしたビジュアルの世界観を味わってくださいませ。 VOL.5の中でも主な写真は、お友達のS子さんが撮影なさっています。 彼女はもちろんカメラマンですが、スピ系のことにも造詣が深く(というより、かなりのツゥです…)北斎よろしく、偏りなく、いろんなモチーフや人物を楽しんで撮っておられる様子。 先日も、とある神社さんに写真を奉納されることになったばかりで、妖怪の世界とともに、さまざまな次元がS子さんにとってのシャッターチャンス…なのかもしれないな~…なんて、まぶしく感じてしまいました。素敵ですね。(^^)

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