ミケ的奇想 vol.1

2003年~2022年3月のアーカイブ

クロワッサンを乞う人

1.17‥‥11年前の阪神大震災。 義祖父の命日。 わたしの出産予定日だった日。(実際は違う日に生まれたけれど) 言霊的に『イザナミ』をあらわす日。 日本人にとって、この言霊はイザナミの母なる慈愛として働く日とも、また反転的に反逆、破壊としてのエネルギーが動く日とも言えるようで、昔から、この言霊の響きのある日にはいろんなことが起こったそうです。 今年の今日、わたしはなぜか、通勤ラッシュのオフィス街に出てみたくなり、朝、何の予定もない御池通を、わざわざスーツを着て歩きました。(笑) オフィス街というのは、朝の独特の活気があります。 なぜそうしたかったのかは、全くわかりません。(笑) 現役時代を含めて、朝のラッシュの中を進んで歩きたいなんて思ったことは一度もなかったのに、です。 すれ違う人、みな、足早に職場に向かってゆきます。 懐かしいオフィスの匂いと、言葉が思い出されます。 そして、その当時、モーニングを食べていた喫茶店スターバックスに変わっていました。コーヒーとクロワッサンを食べました。 地下道へと階段を下りる途中で、ストリートのおじさんが、どこかで拾ってきたキャベツの芯を袋から出してかじっていました。 発作的に先程残したクロワッサンをおじさんに渡していました。 こんなこと、慈善家では断じてないわたしは(^^;)、今まで一度も体験したことのなかったことでした。 正直、良いことをしたとも思えません。(笑)   どんなに今の日本が不景気であっても、どこかの独裁制の国でもないし、戦時下でもない日本においては、どうにかして仕事ができるはずです。 クロワッサンひとつが、おじさんにとってそんな気持ちへの助けになるか、あるいは足をひっぱることになるか、わかりません。 でも、そうしたくて、そうした瞬間、わたしは思ったのです。 わたしと、このおじさんがどう違うのだろう?と。 クロワッサンを、おじさんに手渡したわたしは、単なるエセOLです。(笑) 恥ずかしいこともいっぱいあるわたし。 いつ、ストリートになってしまっても、おかしくない状況は今まであったし、これからも、決してないといえるのだろうか‥。 そして、今、今、その瞬間、拾ったキャベツを齧るおじさんとエセOLごっこをしている恥の多いわたしと、どんな違いがあるというのか? ほんとうに、わからなくなってしまった。 今朝ありがとうも言わず、ぼんやりとクロワッサンを受けとったあの人は、 実は、わたし、だったのです! あれは、わたし、だったのです。 だから、わたしはわたしを助けたいに過ぎなく、また何かをしたところで、どこまでも、わたしはわたしを助けられなくて、いつでもクロワッサンを乞うている人間に過ぎないのだと。 うまく伝わっているかわかりませんが、わたしには大きな発見でした。 その時の感動や発見や興奮が押し寄せ、いろんな衝撃に思わず涙が出ました。 でも、それは‥‥うまく言えませんが、幸せの涙でした。 すべてがつながっていることを実感できた幸せの涙でした。 でも、わたしは、誓いましたよ。 もう二度と、レゲエのおっちゃんに恵んでやんないもんねーだ。(笑)

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