昨日の昼、烏丸の地下鉄を出たところで、号外を手渡された。 記事はもちろん、安倍さんの辞意表明だった。 なぜかはわからないけれど、ぐぐっと涙腺が緩んだ。 こんなことは、今まで一度もなかった。 応援も期待もしていた人ではなかったというのに、フシギな感傷だった。 総理大臣とは言え、駒の一つにしか過ぎひんのやと思った。 しんどかったやろうな。 みんなで寄ってたかって叩いて…… いろいろ問題は多かったとは言え、わたしには、なんだかそんな印象が強い。 去年の今頃、多くの人は、ポスト小泉さんは、安倍さんしかいないって思っていたはずだったのにね。路線が変わると、一斉にこれだ。 小泉さんはすごい人気者だったから、叩くに叩けなかった爺やたちはストレスがたまっていたのだろうか?次は叩きやすい羊だった。だから叩いて毛をむしった。 コイツが元凶だ…なんて顔をして。 でも安倍さんはきっと心配いらない。 今朝になったら、きっとびっくりするくらい清々しい顔で、わたし達の前に現れるに違いない。 歴代の大臣たちの多くがそうだったように、すべてが終わって肩の力が抜けた様子で、今までで一番スッキリとした男前の姿を見せてくれるに違いない。 そして、しばらくすれば「重鎮」なんて言われて、うっとおしい爺やの一人に名を連ねる可能性は高い。(笑) だから、もう彼のためには泣かない。 今は何だか気の毒な気持ちになってしまうけれど、安倍さんは大丈夫だ。 というより、政治家はいい。 一般人なら、こういうことがあったら、次はいつ浮上できるかわからないくらい失脚してしまうもんだけど、政治家はええやんか。総理大臣をやめても、代議士をやめるわけじゃない。 だから安泰。だからポストを追われたところで危機感はなくて、重圧から解放される安堵だけ味わっていればよくて、あんなに清々しい様子でいられるのだ。 だから、ちょっとくらい叩かれたって、割に合う。 それどころか、その後の安泰ぶりを知れば、きっとおつりまで返ってくることだろう。 だから、もう気の毒がるのはやめよう。安倍さんは大丈夫だ。 それよか長年政権を狙い続けた、他党のO爺の不穏な動きの方が心配だ。(笑) 日本の今後が心配だ。 「号外、ご覧になりますか?」と、どこかの英会話スクールの兄さんに声をかけて、彼の配っていた営業用ティッシュと交換した。 号外を手にとって、5分足らずの間に心を駆け巡ったこと。 兄さんは手渡した号外を凝視していた。その後の5分間、兄さんの心を駆け巡ったことはなんだったのだろうか。 所詮、駒の一人に過ぎない兄さん、わたし、そして安倍さん。 しばらくこの訳のわからない三角形の間を、ぐるぐるぐると気持ちが動いていた。 たぶんこの気持ちに一番近い言葉を告げるとしたら、わたしは「歯がゆい」と答えるだろう。