カブトムシは、友人宅で羽化したばかりのワカイコで、とにかく元気。カゴに入れて早々、生殖活動に勤しんでいる。
娘は、交尾ばかりしている雌雄を見ながら、「気色悪い虫が、気色悪い動きしてて、ほんま気色悪い」と、気色悪いを連呼しながら、鳥肌を立てている。
「カブトムシは命が短いから、つかの間のランデブーやん。短い命をたぎらせて、とにかく愛し合うしかないやん」と言うと、
「こいつら、気持ちええと思ってやってるんやろか?それとも、種を残さな、と思ってやってるんやろか?」と聞くので、
「気持ちええ…しかないんちゃうの?」と答えると、
「…やっぱ気色悪い」と若い娘っぽい潔癖な反応。
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くだんのカブトムシ💧
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四十年ほど前になるだろうか。ある夏休み、父と弟とが、近所の林から採ってきたカブトムシの雌雄を飼っていたことがあった。
彼らも、御多分に洩れず、コトを始めようとして、、、始めようとして、、、あれ?始まらない。笑
何が起こっていたかと言うと、♂が情けなかったのか、♀が強靭だったのかはわからないが、オスがメスに襲いかかろうとしても(←語弊のある言い方だけど、カブトムシを飼ったことがある人なら、この表現でわかると思う。そう言う感じなのだ)、いちいちメスに突き飛ばされ、全然、成就しない。
母と二人で、その様子をしばらく見ていたのだけれど、どうにもこうにも埒が明かないので、短気でせっかちでお節介な母は、「まったく、この子(♂)は不甲斐ないなぁ!」と言って、♀を抑えつけ、♂をその上に乗っけて、無理無理に交尾をさせようとした。
私は驚いて「ちょっと待って。相性があると思うわ」と言うと、「ほんなもん、あるかぃ!このカゴには相手しかいいひんのや。夏も終わってまうやろ?好き嫌い言うてる場合かっ!」と答える気性の荒い母。
無理やり実らされた♂の片恋の結実は、翌年に新しい命となって、オガクズの中に潜んでいたが、果たして母が正しかったのか、あかんかったのかは、今も、私には判断がつかない。
なんとも切ない(笑)、幼い私のカブトムシの思い出。
うちの娘には、二十歳過ぎたこの年まで、カブトムシの思い出などない。ずっと長いこと、女の子の一人っ子だったので、ムシに興味を持つこともなく、ましてやムシを飼うことなど考えもつかなかった。母親である私もムシは苦手で、娘をすっかりムシ嫌いにしてしまった。彼女の最初のカブトムシの思い出は、たったひとこと「交尾ばかりして気色悪い」ということだけ。
さて、これからはボンが、カブトムシとの思い出を作っていく。どんなだろうねえ。四年前にも実は、保育園からカブトムシをもらったことがあって、ひと夏だけ育てたのだけれど、彼は全く覚えていない。