ミケ的奇想 vol.1

2003年~2022年3月のアーカイブ

サンタの夢が醒める日

二日前のことだった。

「今年はサンタさんDSiくれるかなあ」と話す娘のそばで、夕方、夫からの携帯メール着信音が鳴った。 この時間帯は、娘宛のメールも多いので、娘はためらうことなく「パパ」と書かれたメールフォルダを開けた。

DSi本体買った。』

娘から「何これ?どういうこと?」と見せられ、慌ててケータイを取り上げる。

(もーっ、パパのアホタレッ!)←わたしの心の叫び。

「何?どういう意味?」を連呼しながら「パパとママからのサプライズってこと?」と聞くので、「そっ、そうやねん!」と動揺を隠せないまま答える。

「そうなん?…やったら、サンタさんにはWiiを頼んでもええの?」と娘。 (うぎゃ、それはあかん…)←わたしの心の悲鳴。 「…なあ、なんでケータイを慌てて隠したん?」 「…なんか、おかしいで」 「…うちの家はサンタさんは来ぉへんの?」

次第に窮地に追いつめられるわたし。

「…なあ?なんか、隠してるやろ?」

いくつかのやりとりののち……

「サンタさんというのは なあ…… …ピンポンダッシュする◯◯のことなんや」

窮鼠、猫を噛む というか、ああ、言ってしまった…。(;;)

(※ちなみに、わが家のサンタクロースは、毎年イブに呼び鈴を鳴らして、玄関先にプレゼントを置いていくのです)

情けない親の敗北でうなだれるわたしに、娘はひとこと「ガーン、タリラ~ン…;」と言ったあと、ぎゃはははと大爆笑。

「ほんまなん?いつもピンポンしてたのは、◯◯やったん?」 「…で、そのあとダッシュして隠れてたん?」 「…いつから?」 「…最初から、サンタさんっていーひんの?」 矢継ぎ早に質問攻めを受け、わたしは泣き笑いしながら、覚悟を決めてすべてを話した。娘も、涙を浮かべている。

………

「…このこと、世界中の全部の大人が知っているの?」と娘。

「ごめんね」と謝って、「サンタさんは、世界中の大人達が、世界中の子供達のために夢を与える壮大なファンタジーなんや」

言葉を選んで、慎重に‘真実’を話す。

「すごい…」

すごいビックリ。 すごいおもしろい。 すごい大人。 すごい芝居。 すごいショック。

娘は「すごい」のひとことに、すべての想いを込めていたように思う。

「わたし、このこと、友だちには誰にもしゃべらへんわ」

と、それでも娘は精一杯の思いやりを見せてくれていた。

パパとママは、なかばアナタは事情を知っているものと思っていたよ。パパに「WiiがダメならDSiならええかなあ」なんて聞くから、確信犯やないかと思っていたんやね。 もう11歳なんやし、お友達の中にはクリスマスを祝わない家もあるかもしれないし、とか。 でも、娘は「サンタさんを本気で信じていた」と言ってくれた。

パパにDSiをリクエストしていいかと訊ねたのは、「パパの反対するものを無理に頼んでもサンタさんは喜んでくれないと思ったから」と言った。これは、パパやママへの思いやりではなく、本気で信じていたことを伝えたセリフ。

この日は、その後眠りに付くまで、思い出しては「ああ、信じれん」を連発してつぶやいていた。

ここまできっちりと信じさせ得たのは、パパとママの腕です。(褒めて下さい)

…で、うかつな対応ですべてを壊したのもパパとママです。(くすん)

夢を与えたのが親なら、夢を壊したのも親。

何だか、世間の縮図です。(^^;)

でも、そのおかげで、受け止めようと精一杯に対応してくれている娘の成長が見られてママは嬉しかった

…な~んて、ちょっと調子良すぎるかもしれないけれど ね。

本音を言えば、中学生になるまでは、まるっと夢を見させてあげたかったよ。親の方も、このイベントをけっこう楽しんでいたからねぇ。(笑)

真実を知ってはじめてのイブの前日、娘は、天津木村をまね、 「サンタさんが実は◯◯だと知ったときの、子供の気持ちを吟じます!」なんて、やっている。

√今でもサンタさんに頼んだらぁあぁ~ サンタさんがピンポンしてくれるような気がするぅ~ √サンタの真実を知ったけどぉおぉ~ まだ受け入れることができないぃ~ アルトオモイマス。 (^^;)

===ハイ、今回はここでおしまいです===

わが家の今年一番のヘッポコ失敗談を恥をさらして話してしまいました。(^^;) …が、このことは、むしろパパとママへのクリスマスプレゼントだったように思うのです。

なぜなら、パパサンタに送った娘のメールの中には『親の愛ってすごいなあ』などと、泣かせるヒトコトを贈ってもらえたのですから。

ああ、サンタクロースさん、長い間ありがとう。素敵な夢をありがとう。

まあ、このあとに続けられていたのが、 『…これからは演技しなくていいからね。クリスマスは23日でもいいよ。Wiiでもいいよ』 とゲンキンなモンだったんですが。(笑)

とは言っても、世のママさんパパさんは、決してうかつなことをしないでくださいね。これは、だらしのない親側の失敗例のサンプルです。(^^;)

娘は、わたしにこう告げました。

「(小5にもなると)友だちの半分以上は、『サンタクロースはいない』と口では言ってる。でも、はっきりと知っている子はほとんどいない。いないって言ってても、心の中ではみんな『どこかにはいるかも?』って信じたいと絶対思っているもん。」と。

サンタの夢は大人になれば、必ず醒める日がくるから。 それまでは、夢を見させてあげたいな。 子供の時しか味わえないファンタジーと現実との境目の海の底で、たくさんの宝物を拾って、大人の世界に踏み出してほしい。

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