恋の女神というと、やはりアフロディーテ。
アフロディーテは、英語でヴィーナス。ギリシャ神話のヴィーナスの誕生神話は、絵描き達にインスピレーションを感じさせるのでしょう、多くの画家がそのシーンを描いていますね。
もっとも有名なものがボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」ですが、今回ご紹介するのは、カバネルとルドン。カバネルのはご覧のように、肉惑的な美がそのまんまと言いますか、誕生時にすでに成熟した女性の姿なんですね。それだけで神話の中の彼女の役目が一目瞭然と言えます。
ルドンは、私の大好きな画家さんの一人で、19世紀後半、活躍されていたフランスの絵描きさん。華やかで官能的な姿はそのままに、種の中で息を潜めて、だれかに歓びの封印を解かれるのを待つ姿にも見えます。少女性と、女の生々しさを合わせ持つ、歓喜の女神さま。このルドンのヴィーナスを眺めていて生まれたお話が『マナ聖』です。
歓喜を極め、聖なる婚姻、合体への因(よすが)とするか、愛欲に溺れ、肉体の次元に絡めとられる因(いん)となるか、二つにひとつの恋の道。
堕つか昇るか‥‥恋に関するこのギャンブル性?も、人を惹き付ける魅力なのでしょう。堕ちるの嫌だと思いながら、心のどこかで堕ちるのを待っているような…人の心の奥には、その両面持っているような気がします。