ミケ的奇想 vol.1

2003年~2022年3月のアーカイブ

その子の夢

この世界だけに生きることが どんなにラクで素敵かをわかっても 前の世界の余韻が抜けるには、ちょっと猶予があるみたいで 前の世界にいるあの子が「かつてあったこと」のように 扱ってもらいたがっているみたい。

たぶん「忘れちゃいやだ」と、だだをこねているだけだから 「忘れないよ」といったん抱きしめて 抱きしめたまま、この世界にいっしょに跳んでみる。

目を開けると、腕の中のその子は、消えてしまっていて この世界は、抱きしめたまま持ち込めるものは 一つもないのだとわかり

でも、どこかに落としてきたかもしれないと すこし罪悪感にかられ、あたりを探す。

夢の中だけに存在していたその子は 心配しなくても、どこにもいない。

なんと最初から、どこにもいなかった!

ただ 夢を見ていただけ。 その子の夢を見ていただけ。

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