ETV特集で被虐待児だった女の子が施設から巣立つまでの二年を追った番組を見た。
自分の思いとは違っても、現実を受け入れるしかない彼女が、憤りながらも受け入れ理解していく(というか、そうするしかない)。
本当はイラストの仕事を目指したいが、それができない(現実の状況の)彼女は介護士になり、お金を貯めてイラストの勉強をしようとしている。
親元に戻り(@虐待をしていた継父はもういないので帰ることができた)、まだ幼い弟妹の面倒を見、母を支えている。
「だれも恨んでないよ。本当に今はだれも恨んでない」。
受け入れざる得ないことを受け入れ、飲み込み、こなしている彼女は静かな美しさを湛えている。慈悲深く崇高だった。
運命は、どこまでも彼女の優しさを引き出そうとしているように見えた。まだまだ、まだまだ、と。
卒園の日に、その園にきて一番嬉しかったことが布団の上で眠れたことだと言った。お家で布団で寝たことなど一度もなかったからと涙ぐんだ彼女。
わたしは、イワナガを想った。
あの静謐な美が、今、彼女の中で育っている。
運命にしつこく叩かれることで、娘の一つ一つの何気ない行為までもが、意味のある動作に見えてくるようにさえなる。彼女はまだその気高さを自覚していない。